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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)853号 判決 1957年3月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人弁護士高野篤信の上告理由について。

原判決は、「被上告人が昭和二四年一一月一一日上告人に対してなした別紙第一号目録記載の家屋に関する本件賃貸借契約を解約する旨の申入につき、無条件で明渡を求めるのは正当でないが、その申入が別紙第二号目録記載の離家等を上告人に居住のために提供し且つ判示便所を使用すること等を許すものと認めうるから、正当な事由を具え、本件賃貸借契約は、前記解約の申入後六月を経過した昭和二五年五月中旬終了したものというべく、従つて、右の提供をなお維持してこれを条件とする被上告人の請求は認容しなければならない」旨判示して、論旨摘示のごとき主文の判決を言渡したことは、所論のとおりである。そして、原判決は、被上告人の第二次の請求に基づき、その申立の範囲内でなされたものであつて、その理由が第一次請求を排斥した前段の理由と異なることはもとより当然であるから、判決の理由に所論のような喰い違いは存しない。また、原判決は、被上告人が第二号目録記載の家屋についての賃貸借の提供をなし且つ該家屋を引渡すことをもつて、第一号目録記載の家屋に対する明渡の執行の条件と定めたに過ぎないことが判文上明らかである。されば、上告人が右賃貸の提供を承諾し且つその引渡を受けるか否かは、全く自由であつて、毫も強制されることはないものといわなければならぬ。それ故、所論1は採用できない。

次に、被上告人が原判決を執行するには、上告人に対して第二号目録記載の家屋の賃貸の提供およびその引渡の提供をした上、裁判所に対してその事実を証明して執行文の付与を受ければ足り(民訴五一八条二項、五二〇条参照)、上告人においてこれが承諾をすると否とを問わないものであるから、論旨2も採用し難い。

さらに、乙第一号証に関する原判決の説示は、当裁判所においてこれを正当として是認できるから、所論3も採ることができない。

これを要するに、原判決には所論4の違法を認めることができない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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